SEAnews 1997-12-16 ArtNo.13206

【シンガポール】リー・クアンユー上級相は、このほど「アジアが直面する金融危機は、決してアジア的経済モデルの欠陥を意味するものではなく、アジア経済は危機を乗り越え力強い回復に転じる」との見通しを語った。
ドイツのビジネス週刊誌Wirtschaftswocheのインタビューを受けたリー氏は、いわゆる“アジアの世紀”が誇大宣伝ではなかったかと疑問に対して、「個人の自立的な向上心と家族的価値観に根ざした儒教的社会組織の真価は時間が証明する」とするとともに、21世紀にはアジアが依然として重要な役割を演じるとの考えを示した。それによると、中国の国民総生産(GNP)は21世紀には米国を追い越し、世界の重心はこの点からだけでも大西洋から太平洋に移動する。
今回の経済危機は政治とビジネスの過度な密着と言うアジアが共通して抱える問題を浮き彫りにしたが、アジア的経済モデルそのものの欠陥を示すものではない。とは言え、アジア諸国がその抱える問題の克服に本腰で取り組まないなら、経済難が本当の危機に発展する可能性はある。しかし関係国は極めて迅速に対策を講じている。
現在の問題は決して一夜にして生じたものではなく、新たな挑戦に対応して従来の体制の適切な調整がなされなかったことに伴うものである。例えば韓国の中央主導の経済モデルは1980年代半ばまでは有効に機能したが、韓国市場が世界市場にリンクされる中で、最早有効ではなくなった。日本においても大蔵省は国際金融市場の国内金融システムに対するインパクトを早期に把握することができなかったと言う。
社会の繁栄に伴い家族を中心にした価値観は次第に消滅するとの見方に、リー氏は同氏の孫も米国のポップ文化の影響下に成長しているが、儒教的な基本的価値観が維持されるよう望むとし、個人的には儒教的価値観は時代の試練を乗り越えることができると信じると語った。(ST,LZ:12/15)