日本語版『トマスによる福音書』の著者荒井献氏によると、『花嫁の部屋』の原語『ニュンフォーン』は文字通りには『結婚の場所』で、分離した男女が知恵(グノーシス)により原初的統合を回復する『聖なる結婚』の秘儀の場所とされ、ピリポ福音書の五つの典礼では最高の地位を与えられている。男と女が一人、すなわち『単独者』として入ることが約束されている『御国』の象徴である。『単独者』とは、『分裂を超えて、原初的統合(propator = original Self)を自己の内に回復する者』を意味し、この本来の自己による支配の実現が『御国』の現成を意味する。トマス福音書では『単独者』と言う句がキーワードとして繰り返し使用されている。