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書評:イエスとグノーティシズム--禅宗の起源(2)
トマス、ピリポ等のグノーシス・グループは、『世界各地に離散したユダヤ人をエルサレムに呼び戻し、イスラエルを復興する』と言う極めて政治色の強い十字架計画には、初めから距離を置いていたように見える。
イエスの異なる指示

イエスは当初弟子たちに、自分が十字架に処せられた後、『ガリラヤに戻れ(マルコ14:28,16:7,マタイ28:7,10)』と指示したが、使徒行伝によると、復活したイエスは、改めて『エルサレムに留まれ(使徒1:4)』と言う指示を出したとされる。このことから、十字架に掛けられる前にイエスが描いたシナリオとは異なる事態が生じたことが窺える。イエスは、最後の晩餐の席で、譬えガリラヤに戻ることができなくても、当初の計画通り十字架に処せられる決意をイスカリオテのユダに伝え、ユダは直ちに晩餐会場に隣接した大祭司カイアファの屋敷にそのことを報告した。
しかし、ペテロ、アンデレ、大ヤコブ、ヨハネ等、洗礼者ヨハネの元弟子に加え、トマス、ピリポ、ナタナエル等、グノーシスト・グループも、イエスの最初の指示に従ってガリラヤに戻ったようだ(ヨハネ21:1,マタイ26:16)。
原始キリスト教団の誕生

処刑から僅か1ヶ月半後のペンテコステの日に、大祭司カイアファの屋敷に隣接したエッセネ派の集会所で、原始キリスト教団が発足、この日だけで異邦人を含む3000人が新たに教団に加わったと言う(使徒2:1-41)。このことから見て、イエスの第二の指示は、ガリラヤに帰還した信徒ばかりでなく、地中海沿岸各地の異邦人教会にも伝えられたものと見られる。
イエスの処刑後信じられないほど短期間に、地中海沿岸各地の異邦人教会代表も参加した教団が発足したことからすれば、最後の晩餐の席で、イエスがイスカリオテのユダに最後の指示を出す遙か以前、あるいはイエスが布教活動を開始する前に、新教団のリーダーはイエスではなく、小ヤコブにすること、ペンテコステの日にエッセネ派集会所で教団の発足式を行うこと等の詳細なスケジュールが立案され、大祭司やローマ総督、さらにはヘロデ王家の了解も得ていたものと予想される。さもなければ地中海沿岸各地の代表も参加し、原始教団がこれほど早く発足するはずがない。
グノーティシズム/ナザラティズム/パウロの統合
今日のキリスト教には、グノーティシズム(イエス)、ナザライティズム(小ヤコブ)、そしてパウロの信仰義認の思想が混然としている。グノーティシズムは元々旧約の神の否定を通じて、その教理を鮮明にしたが、どうやらグノーシスの教理を理解していなかった共観福音書の著者らは、旧約の教理に基づいてイエスの教えの再構築を試みた。一方、パウロは、キリスト教を非ユダヤ人社会に広めるために、ユダヤ教の根幹を成す律法を否定した。こうした点からも、原始キリスト教団が全く異質の宗教グループの寄り合い所帯であったことが分かる。そしてそれを可能にしたのは、小ヤコブの包容力であったものと見られる。加えて、ヨハネ伝の著者は、イエス、小ヤコブそしてパウロの思想の融合に努めたようだ。
小ヤコブとパウロ

小ヤコブは一人のナザライトとして旧約の律法を厳格に遵守する生活を率先して行い『行信一如』を説いたが、他人にそれを押しつけることはしなかったようだ。有名な山上の垂訓の内容は、非情な十字架計画を完遂したイエスの強力な個性とは、若干異なっており、むしろ迫害や艱難を乗り切り、教団を守り抜いた弟ヤコブの個性にピッタリしているように感じられる。しかし、自分の信条と異なるものは断じて受け入れないパウロが布教に加わると、エルサレム教団内の対立が深まり、ペテロが仲裁に苦慮したことが窺える。しかしグノーシストの教団における影響力を弱めること(小ヤコブ)あるいは排除すること(パウロ)では、両者の利害は一致していたものと見られる。
グノーシストと洗礼者ヨハネ
一方、トマス、ピリポ等のグノーシス・グループは、『世界各地に離散したユダヤ人をエルサレムに呼び戻し、イスラエルを復興する』と言う極めて政治色の強い計画には、初めから距離を置いていたように見える。彼らは、イエス同様自分たちを、光の子らと見なしていた。その点、神の一人子イエスに臣従(信従)したペテロ、大ヤコブ、ヨハネ等の洗礼者ヨハネの元弟子とは異なる。彼らは、小ヤコブを頂点とする原始キリスト教団が発足すると、イエスの思想の原点になったグノーシス主義をサマリヤ等の地方や海外に布教する活動に専心したものと見られる(使徒8:5)。
しかしイエスに直接接触した体験を有する第一世代のグノーシストが世を去ると、彼らの後継者らは、ヨハネの福音書とヨハネの黙示録をモデルにグノーシス主義の救済神話を再構築したようだ。

禅宗の起源
グノーシス主義の立場からすれば、エデンの園に生えていた『善悪を知る木(グノーシスケイン)』の実をとって食べることをアダムとイブに教えた蛇は、神の実体が聖霊(言葉)であることを人類に伝えたイエスの予型である。
イエスは言葉や文字では表現できない神そのものを、すなわち聖霊(ホーリー・スピリット)を伝えようとした。すなわち聖霊のバプテスマである。イエスが聖霊のバプテスマを施したことは、ヨハネ福音書や共観福音書だけでなくパウロの書簡でも語られている。興味深いことは、共観福音書とヨハネ福音書では何れも冒頭や初めの部分に洗礼者ヨハネの証しとして、そのことが明らかにされているが、パウロの書簡は、ほとんど洗礼者ヨハネに言及していない。
イエスの双子の兄弟と称される十二使徒の一人、トマス(ディディモはギリシア語で双子、トマスもアラム語で双子を意味する)によりインドに伝えられた聖霊のバプテスマは、禅仏教の警句による教えの伝統に受け継がれ、公案と言う極地にまで高められた。
ウロボロスと円相

ギリシア語魔術パピルスに描かれた自分の尾を噛む蛇は、『初めと終わりは一つ』と言う思想を象徴するグノーシス主義の代表的図像の一つで、蛇の身体から成る円の中に『万物は一つ』とギリシア語で記されている。
ヨハネ福音書の『初めに言葉があった。言葉は神とともにあった。言葉は神そのものであった。彼(イエス)は初めから神とともにあった。』(ヨハネ1:1-2)と言う書き出しやヨハネの黙示録の『わたしはアルパであり、オメガである。最初の者であり、最後の者である。初めであり、終りである。(黙示22:13)』と言うくだりに明確に表現されているこの思想は、禅宗に引き継がれた。達磨から数えて三代目の僧璨鑑智(そうさんかんち)禅師(?-606)は、その著『信心銘』において、「至道(至極の道、究極の真理)は、太虚のように円(まど)かで、欠けるところも余るところもない」と説いている。その後、禅宗、取り分け潙仰宗では、示教に際して円相を多用するようになった。最初に『円相』を描いたのは、六祖慧能禅師の法嗣南陽慧忠禅師とされる。

『聖霊のバプテスマ』とは一体何か
ヨハネ福音書の弁証法に従うなら、
【テーゼ】  『人は、人の子の証しを受け入れ、聖霊のバプテスマを受けることにより永遠の命を得られる(ヨハネ5:24)』。
【アンチ・テーゼ】  しかし、『地上の人間は、決して天から来たものの証しを理解できない(ヨハネ3:32)』。
それでは、地上の人間はどうして永遠の命を得られるのか。
【ジン・テーゼ】  『地上の人間は始めに神と共にあった言葉(ヨハネ1:1)に立ち返り、神が全き真理であることを自ら覚知すればよい(ヨハネ3:33)』。
文益禅師は「お前は慧超だ」と答えることにより、慧超自身の内に秘められた『真の自己(声前の一句)』を突きき付けたのである。(キリスト教の起源p.155)
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【参照】
イエスの異なる指示
マルコ14:28
しかしわたしは、よみがえってから、あなたがたより先にガリラヤへ行くであろう。
マルコ16:7
今から弟子たちとペテロとの所へ行って、こう伝えなさい。イエスはあなたがたより先にガリラヤへ行かれる。かねて、あなたがたに言われたとおり、そこでお会いできるであろう、と。
マタイ28:7
そして、急いで行って、弟子たちにこう伝えなさい、『イエスは死人の中からよみがえられた。見よ、あなたがたより先にガリラヤへ行かれる。そこでお会いできるであろう』。あなたがたに、これだけ言っておく。
マタイ28:10
そのとき、イエスは彼らに言われた、「恐れることはない。行って兄弟たちに、ガリラヤに行け、そこでわたしに会えるであろう、と告げなさい」。
使徒1:4-5
そして食事を共にしているとき、彼らにお命じになった、「エルサレムから離れないで、かねてわたしから聞いていた父の約束を待っているがよい。すなわち、ヨハネは水でバプテスマを授けたが、あなたがたは間もなく聖霊によって、バプテスマを授けられるであろう」。
Place of Last Supper
最後の晩餐とキリスト教会創設の会場になったエッセネ派集会所の位置。(左下)

イエスの予型

グノーシス主義の立場からすれば、エデンの園に生えていた『善悪を知る木(グノーシスケイン)』の実をとって食べることをアダムとイブに教えた蛇は、神の実体が聖霊(言葉)であることを人類に伝えたイエスの予型である。
《青銅の蛇》
天から下ってきた者、すなわち人の子のほかには、だれも天に上った者はない。そして、ちょうどモーセが荒野でへびを上げたように、人の子もまた上げなければならない。それは彼を信じる者が、すべて永遠の命を得るためである。(ヨハネ3:13-15)


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