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書評:聖霊のバプテスマ(忍俊不禁一場漏逗)

無門曰く、「これ風の動くにあらず、これ幡(はた)の動くにあらず、これ心の動くにあらず、いずれのところにか師を見ん。若し者裏(しゃり:ここのところ)に向って見得(けんとく)して親切ならば、まさに二僧鉄を買って金を得るを知る。祖師忍俊不禁(にんしゅんふきん)にして、一場の漏逗(ろうとう)なり。」≪無門関第二十九則非風非幡≫
異邦人教会運動の震源地

早くも紀元前3世紀には、ヘレニズム世界の中心都市アレキサンドリアにおいて旧約聖書のギリシア語への翻訳が開始された。翻訳作業のイニシアチブをとったのは、エジプト王プトレマイオス二世フィラデルフォスとされる。このことから、紀元前3世紀以前にヘブライ語を知らぬ異邦人、とりわけギリシア人の間にユダヤ教が浸透していたことが窺える。
テレアビブ大学の歴史学者シュロモー・サンド教授によると、西暦1世紀のユダヤ国内の人口が80万人前後であったのに対して、世界のユダヤ人口は400万人にのぼり、最盛期にはローマ帝国住民の7~8%がユダヤ教に改宗した。会堂(シナゴーグ)に参加できない未割礼のユダヤ教徒予備軍の数はさらに膨大な数にのぼったものと見られる。
ギリシア語を話すユダヤ教徒が圧倒的多数に

つまり当時のユダヤ教徒の圧倒的多数は、ヘブライ語でもアラム語でもない、ギリシア語を用いていたことになる。換言すれば、イエスが誕生する頃には、ユダヤ教の中心はヘブライ/アラム語圏のイスラエル国内から海外のギリシア語圏に移っていた。なればこそパウロを始めとする使徒たちが専らギリシア語訳旧約聖書を用いていたのかと言う理由も頷ける。
紀元前3世紀か前2世紀ころアレキサンドリアに在住した、アリストテレス学派の哲学者アリストブロスは、ギリシア哲学によるユダヤ教の解釈を試み、その後継者フィロン(BC25-AD47)は、プラトン哲学と聖書を合体した。ノース・カロライナ大学宗教学研究所のジェイムズ・D・ティバー所長によれば、ユダヤ人哲学者フィロンは、禁欲的二元論を声高に唱えたプラトンにモーセに次ぐ崇敬の念を抱いたと言う。
エジプト王プトレマイオス二世が、外交文書や通商交易に関する文書ならまだしも,物語りや、詩文、法律文書、箴言など多岐にわたる膨大な量の旧約聖書を、国策としてギリシア語に翻訳したことや、ローマ皇帝ネロがグノーシス主義の開祖で洗礼者ヨハネの弟子だったとされるサマリア出身のシモン・マグスを宗教顧問にしたことからも、ユダヤ教徒対策が当時の地中海世界の最重要政治課題の一つであったことが窺える。
ルフォスの母とパウロの回心

パウロは、≪ローマ信徒に宛てた手紙≫の末尾に「主がお選びになり信者に加えられたルフォスとその母親に宜しく。彼女は私の母でもあります(ローマ16:13)」と記している。
イエスが十字架を負わされ、ゴルゴタの丘に行く途中、シモンと言うクレネ人が通りかかったので、ローマ兵は、この男に替わって十字架を負わせたと言う記述が、マタイ福音書、マルコ福音書、ルカ福音書の何れにも存在する。特にマルコ福音書は「シモンはアレクサンドロとルフォスの父であった」と注意書きをつけている。マルコ福音書のこの注意書きは、アレクサンドロとルフォスが当時のキリスト教会における著名な指導者であったことを暗示している。
3福音書はいずれもシモンはクレネの田舎から来たと述べているが、クレネは当時アレキサンドリアに並ぶ地中海に面した一大都市だった。また『田舎』を『農場』と訳した版もあることから、農場経営者だったのかもしれない。いずれにしても、シモンは、はるばる北アフリカから息子二人を連れてエルサレムに巡礼する財力を備えた有力者だったに違いない。
またローマ兵が、政治犯として処刑されるイエスの十字架を、見ず知らずの通行人に負わせるとは考え難い。おそらくイエスに替わって十字架を運ぶ役目は、当初からシモンが務めることになっていたのだろう。さもなければ、福音書の記者らがその出身地や名前を知り得るはずもない。
パウロが『主がお選びになり信者に加えられた』と述べているところからすると、ルフォスはイエスの生前の弟子だったようだ。もしルフォスがシモンの息子と同一人物なら、イエスが直々にシモンを選び、十字架を運ぶ役割を委ねたのかも知れない。
さらに、ただごとでないのは、パウロがルフォスの母親に関して「彼女は私の母でもあります」と述べていること。パウロがルフォスの同母兄弟と言うことはあり得ないから、ルフォスの母は、パウロを回心させた『霊的な母』だったのではなかろうか。
教会運動のマニフェスト

パウロは、第二回伝道旅行の途中ギリシア南部の都市コリントでこの書簡を書いている。彼は、ルフォス親子を含め27のローマ教会リーダーや家族の名を列挙し、宜しくと述べている。その中にはヘロデ王家のメンバーと思しきヘロディオンと言う名も見られる。コリントに隣接したケンクレアイ在住のテルティオが、コリント信徒指導者のガイオとコリント市会計係エラストとその兄弟クワルトの立ち会の下に同書簡を筆記し、同じくケンクレイアイ在住の女性信徒フェベがローマへの配達を引き受けたようだ。
こうしたことから小アジアのみならずギリシアやローマにさえ、膨大な異邦人信徒のコミュニティーが存在していたことが分かる。こうした異邦人信徒のコミュニティーの起源はイエスが誕生する数百年前に遡るものと見られる。16章からなるこの書簡の内容は膨大で多岐にわたり、パウロ個人の書簡と言うより、パウロが率いる教会運動の立場をローマ教会の信徒に対して明確にするマニフェストだったと言える。
また同書簡は最後に「兄弟、姉妹よ、もう一つお願いします。あなた方が教えられて来たことに反することを説き、あなた方の信仰を分裂、転覆させる人々に警戒し、こうした人々から遠ざかりなさい。(ローマ16:17)」と付言しており、パウロ共同体以外にも、異なるマニフェストを保持するグループが存在し、地中海沿岸各地の異邦人信徒への働きかけを行っていたことが窺える。
分派活動に警戒呼びかけ

パウロは弟子の≪テモテに宛てた第一書簡≫の中で「神をないがしろにするような人が、たちまちキリストへの信仰を失ったとしても、少しも不思議はありません。ヒメナオとアレキサンデルの二人は、その見本です。私は、彼らを罰するために、悪魔の手に引き渡さざるをえませんでした。それは、キリストの名を辱しめてはならないことを、身をもって学ばせるためです(1テモテ1:19-20)」と述べている。また≪第二書簡≫の中で「銅細工人のアレキサンデルが私をひどく苦しめました。そのしわざに応じて主が彼に報いられます。あなたも彼を警戒しなさい。彼は私たちのことばに激しく逆らったからです(2テモテ4:14-15)。」と警鐘している。もし第一と第二の手紙のアレキサンデルと言う信者が同一人物なら、イエスの十字架を替わって背負ったシモンの息子とは別人と見られる。
パウロはさらに≪テモテに宛てた第二書簡≫の中で、「俗悪な無駄話は止めなさい。そんな議論は、火のように、どんどん燃え広がって、人々を傷つけるばかりです。 議論好きのヒメナオとピレトは、まさしくこの種の人間です。あの連中は真理の道を踏みはずし、死人の復活など、もうすんだことだとして偽りの教えを言い広め、それを真に受けた人の信仰を、台なしにしています(2テモテ2:16-18)。」と述べており、どうやら死者の復活の時期に関して認識の相違が生じていたようだ。
パウロの再臨信仰

パウロは、これ以前にやはりコリントでしたためた≪テサロニケの信徒への手紙一≫の中で、キリストの再来は、彼が生きている間に実現し、その時には、キリストにある死者すなわち殉教者まず初めによみがえり、次に、パウロを含む生きいる信者と殉教者らがいっしょに雲の中に一挙に引き上げられ、空中でイエスと再会すると説いている。
「私たちはイエスが死んで復活されたことを信じています。それならば、神はまたそのように、イエスにあって眠った人々をイエスといっしょに連れて来られるはずです。私たちは主のみことばのとおりに言いますが、主が再び来られるときまで生き残っている私たちが、死んでいる人々に優先するようなことは決してありません。主は、号令と、御使いのかしらの声と、神のラッパの響きのうちに、ご自身天から下って来られます。それからキリストにある死者が、まず初めによみがえり、次に、生き残っている私たちが、たちまち彼らといっしょに雲の中に一挙に引き上げられ、空中で主と会うのです。このようにして、私たちは、いつまでも主とともにいることになります。(1テサロニケ4:14-17)」
パウロの神学の両義性

しかし、パウロは「神がキリスト・イエスを通じて人々の陰の生活を裁く日が間もなく到来します(ローマ2:16)」とし、キリストの再臨を待って初めて永遠の命を得られると説く一方で、「何故なら、洗礼を通じキリストと共に死にキリストと共に葬られた我々は、ちょうどキリストが父の輝ける力により死から蘇ったように、新たな命を得て生きることができるからです(ローマ6:4)。そしてあなたは彼(イエス)に属していますから、命をもたらす霊の力が既にあなたを死をもたらす罪の支配から解放しています(ローマ8:2)」とし、イエスを信じたものは、その時点で永遠の命を手に入れることができると述べている。
また、「人が義と認められるのは、律法の行いによるのではなく、信仰によるというのが、私たちの考えです(ローマ3:28)」と述べる一方で、「今や罪の奴隷の身分から解放され、正しい生活の奴隷になったのです(ローマ6:18)」とし、正しい行いをする義務があると説いている。
さらに「私はかつて法を理解することなく生きていました。しかし例えば貪るなと言う戒めを知った時、罪の力が働き、私は(霊的に)死にました。そこで私は、命をもたらすはずの法の戒めが霊的な死をもたらすと言うことを発見しました。罪はこうした戒めに乗じて私を欺き、戒めを利用して私を(霊的に)殺しました(ローマ7:9-11)」とし、肉体の死と霊的な死を使い分けている。
このためパウロ神学のこうした両義性を弁えず偏面的に理解した弟子達が、相互に批判し合う状況が生じたものと見られる。上記のテモテ宛の第一と第二の手紙は、何れも新約聖典中の14通のパウロの書簡に含まれているが、日本語版ウィキペディアによると、最近の研究の結果、パウロ自身が書いた可能性は極めて薄いと見られているようだ。
再臨信仰の再構築

これに対して≪テサロニケの信徒への手紙一≫は、パウロ自身が書いた可能性が最も高いとされる7書簡の1通とされていることから、パウロは実際に「主は、号令と、御使いのかしらの声と、神のラッパの響きのうちに、ご自身天から下って来られます。それからキリストにある死者が、まず初めによみがえり、次に、生き残っている私たちが、たちまち彼らといっしょに雲の中に一挙に引き上げられ、空中で主と会うのです。このようにして、私たちは、いつまでも主とともにいることになります」と説いていたようだ。
当時は、旧約≪ダニエル書≫の預言に基づく救世主の来臨が広く信じられており、エルサレム教会創設のマニフェストもこうした民間信仰を重要なより所として作成された。しかし、イエスの再臨は、パウロの生前には、終に実現せず、ユダヤ戦争の結果、エルサレム教会そのものも消滅してしまった。このため、旧約≪ダニエル書≫の続編として、≪ヨハネの黙示録≫が著され、再臨信仰の再構築が図られたものと見られる。 
忍俊不禁一場漏逗

中国唐代の六祖慧能禅師(638-713)が広東省の法性寺に挂錫のおり、印宗和尚の「涅槃経」の講義を知らせる旗を門前に掲げた。すると二人の僧が風にはためく旗を見ながら、「旗がはためくから風が動くのだ」、「いや風が動くから旗がはためくのだ」と問答を始め、互いに譲らなかった。そこで慧能禅師が「旗が動いているのでも、風が動いているのでもない。あなた方の心が動いているだけのことだ」と言うと、二僧は悚然として黙ってしまった。
宋代の禅僧、無門慧開和尚(1182-1260)は、この商量に「風が動くのでも、旗が動くのでも、心が動くのでもなければ、六祖慧能禅師もいない。ここのところが分かれば、鉄を買って金を得たようなもので、釈迦も達磨も、笑いころげ、思わず尻尾を出すだろう」と注釈をつけた。
後小松天皇の落胤とも言われる室町時代の禅僧、一休和尚(1394-1481)は「釈迦といふ いたづらものが世にいでて おほくの人をまよはすかな」と言う狂歌を詠んでいる。<以下次号>

『聖霊のバプテスマ』とは一体何か
ヨハネ福音書の弁証法に従うなら、
【テーゼ】 『人は、人の子の証しを受け入れ、聖霊のバプテスマを受けることにより永遠の命を得られる(ヨハネ5:24)』。
【アンチ・テーゼ】 しかし、『地上の人間は、決して天から来たものの証しを理解できない(ヨハネ3:32)』。
それでは、地上の人間はどうして永遠の命を得られるのか。
【ジン・テーゼ】 『地上の人間は始めに神と共にあった言葉(ヨハネ1:1)に立ち返り、神が全き真理であることを自ら覚知すればよい(ヨハネ3:33)』。
文益禅師は「お前は慧超だ」と答えることにより、慧超自身の内に秘められた『真の自己(声前の一句)』を突きき付けたのである。(キリスト教の起源p.155)
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