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書評:聖霊のバプテスマ(他はこれ阿誰)

密かにエルサレムに
ユダヤ暦7月10日の仮庵(かりいお)の祭りが近づき、弟たちから一緒にエルサレムにのぼるよう誘われたイエスは、「私の出番はまだ来ていない」と断り、独りガリラヤにとどまった。しかし弟たちが出かけた後、自分も人目を避けこっそりエルサレムにのぼった。(ヨハネ7:10)
エルサレムでは、ユダヤ人たちが、口々に「あの男はどこだ」と、イエスが来るのを見張ていた。群衆は、陰では様々噂をしていたが、ユダヤ人を恐れて、誰も表だってイエスのことを口にするものはなかった。(ヨハネ7:11-13)

祭りの最中に神殿で説教
祭りが半ばに近づいた頃、大胆にもイエスは神殿の中庭で説教を始めた(ヨハネ7:14)。群衆の中のあるものは「この男は、彼ら(ユダヤ人達)が殺そうとしているものではないか。神殿で公然と説教しているのに、誰もとがめないのは、どうしたことだ。神殿聖職者らは、この男が本当に救世主だと結論したのだろうか」といぶかった(ヨハネ7:25-26)。

群衆も聖職者も異変を予感
過ぎ越しの祭りの最中に神殿の庭で縄の鞭を振るって生け贄用の牛や羊を追い払い、両替商の机をひっくり返した男が、警備兵からとがめられることもなく、再び神殿に立ち入り説教まで行うのを見て、群衆ばかりでなく、聖職者たちも、何か異変が生じつつあることを予感したにちがいない。
この時、イエスは「そうだ、あなた方は私を知っている。私がどこから来たかもしっている。私は自分から来た訳ではない。しかし私を使わされた方は真実な方である。あなた方はその方を知らないが、私は知っている。私はその方の下から来たのであり、その方が私を使わされたのである(ヨハネ7:28-29)」と叫んだ。

私を使わしたのは真実な方
少なからぬ神殿聖職者は、イエスの説教の内容に不満を抱き、憤慨したろうが、ナジル派の司祭として、大祭司のみに許された聖所における祭儀を執り行っていた義人ヤコブの兄に手を出すことはできなかったものと見られる。また、前任の大祭司で実権を握るアンナスとその女婿で現職の大祭司、カイアファの暗黙の了解も得ていたであろうことは、イエスから言われるまでもなく誰もが察していた。
ヨハネ福音書は、「この時、彼ら(ユダヤ人たち)はイエスをとらえようと考えたが、誰一人イエスに手をかけるものはなかった。その時がまだ来ていなかったからである(ヨハネ7:30)」と述べている。
大祭司カイアファは、この後、サンヘドリンにおいて「あなたがたは、何もわかっていない。ひとりの人が国民に代って死に、全国民が滅びないで済むことがわたしたちにとってどれほどよいことかを、考えてもいない」と述べ、イエスが国民のために、また単に国民のためだけでなく、散在している神の子らを一つに集めるために、死ぬことになると予言した。この証言を受けてエルサレムの宗教界はイエスを十字架に架ける準備に着手したとヨハネ福音書は記している(ヨハネ11:49-57)。

聖なる単独者
一旦、オリーブ山に退き翌日再び神殿の庭で説教を始めたイエスにユダヤ人達は「あなたは一体だれなのか」と質した。イエスは「私が誰かは、初めからあなた方に言っているではないか(ヨハネ8:25)」と述べ、さらに「あなたがたは人の子を十字架に掛けた後で、はじめて、わたしがそういう者であること、また、わたしが自分からは何もせず、ただ父が教えて下さったままを話していたことが、わかるだろう(ヨハネ8:28)」と答えた。
ヨハネ福音書は、その全編を通じて、天地開闢以前に神とともにあり、神そのものであった言葉(ロゴス)から万物が創造され、それが、イエスの実体であることを説き明かしている。ちなみにグノーシス主義における『独り子(アウトゲーネス)』には、『自ら生まれたもの』と言う意味が存在するが、シモン・ペテロも「あなたは永遠なる命の言葉を持っており、われわれはあなたが聖なる単独者であられることを信じ知っております(ヨハネ6:68-69)」と言う極めてグノーシス的、したがってまた仏教的な証しを行っている。

他はこれ阿誰(あすい)
中国宋代の禅僧東山法演禅師(1024-1104)はある日、弟子たちに向かって「インドの菩提樹の下で『天上天下唯我独尊(何ものにも依存しない聖なる単独者)』と証見した釈迦牟尼も、釈迦の死から56億7000万年後に降臨してこの世を救済すると言う弥勒菩薩も、畢竟じて彼の奴隷に過ぎない。さあ、彼とは一体誰だ」と問われた。
≪無門関≫第45則に収録されたこの公案に、法演禅師の5代目の弟子に当たる無門和尚は、「彼の正体が分かれば、路上で肉身の父に会ったようなもので、最早他人に是非を問う必要は無い」とし、さらに「他の弓を挽くこと莫れ、他の馬に騎ること莫れ、他の非を辨ずること莫れ、他の事を知ること莫れ」と懇切な説明をつけている。もしイエスに「他とは誰か」と尋ねたなら、イエスは『生後7日目の幼児』(トマス:4、ルカ18:16-17)を指し示したことだろう。

その昔、韓国の金玉均、中国の孫文や蒋介石、インドのラス・ビハリ・ボース、ベトナムのファン・ボイ・チャウなど日本に亡命したアジアの民族主義者を支援したことで知られるアジア主義者の巨頭頭山満に、ある人が「先生はどなたに参禅なさいましたか」と問うたところ、頭山は庭先で植木の手入れをしている老人を指して、「おう、俺は毎日この爺に参禅しておる」と答えたと言う。

アラム語起源と『聖トマス・キリスト教会』
興味深いことは、ヨハネ福音書の著者は、エルサレム周辺やユダ地方に住んでいたネイティブなヘブライ語スピーカーをユダヤ人と呼び、当時の共通語アラム語を話すそれ以外の群衆と区別している。あたかも自分たちガリラヤ人はユダヤ人ではないと言っているようにも聞こえる。
ちなみにイエスは、側近の弟子に、ケパ(ギリシア語ペテロ)とかトマス(ギリシア語ディディモ)と言ったアラム語の呼称を授けており、イエス自身も普段はアラム語を用いていたようだ。西暦1世紀の使徒トマスの布教活動に起源を発するとされるインドのケララ州に存在する古典的教会組織『聖トマス・キリスト教会』では、現在も、アラム原語に由来するシリア式礼拝儀礼を用いていると言う。これに対して、イエス処刑の1ヶ月半後にエルサレムに誕生した原始教会を起源とする今日のキリスト教会は、アレキサンドリアで編纂されたギリシア語旧約聖書を典拠とし、新約聖書もすべてギリシア語版を原典と見なしている。

シンクレティズム
紀元前4世紀末のアレキサンダー大王の東征に伴ってに生じたシンクレティズム(東西文化融合)の潮流の中で、ヘレニズム文化の一大中心地アレキサンドリアでギリシア語訳旧約聖書が編纂されると、ヘブライ語を理解せぬ異邦人ユダヤ教徒により、シナゴーグとは別に教会が各地に組織された。地中海周辺地域で発生した教会運動の潮流は、その後数百年を経て終にユダヤ教の総本山エルサレムに押し寄せ、各地の教会を統括するエルサレム教会が組織され、イエスの弟ヤコブが初代大司教に指名された。これにより世界に離散したユダヤ教徒を再びエルサレムに呼び戻すと言う大祭司カイアファの夢が実現し、その後、しばらくユダヤ教とキリスト教の表面的な蜜月時代が続いた。この時代のキリスト教会は異邦人教会を統括するするユダヤ教の外郭組織、もしくはユダヤ教の一派と目されていた。

大分裂
しかしユダヤ戦役が勃発すると、ユダヤ教徒主流派は、ローマ軍に包囲される前にエルサレムから脱出したキリスト教会を裏切り者と非難、キリスト教会側もこれに反論したことから、両派の大分裂が生じた。
ローマ戦役後、神殿を失ったユダヤ教徒は、それまでの神殿祭儀を中心にした宗教から経典に基づく宗教に変身を強いられ、聖職者らはヤムニア会議を開き、本腰を入れてヘブライ語聖書正典の選考に乗り出した。新約聖書もちょうどこの頃編纂されたことから、その内容には、両派の対立が色濃く反映されている。
新約聖書の原典はほとんど例外なく、ギリシア語で書かれていることから、ヘレニスト・ユダヤ教が、キリスト教会の源流だったことが窺える。しかし、イエスはその生涯を通じてアラム語を用い、アラム語で説教していたものと見られる。したがってアラム原語に由来するシリア式礼拝儀礼用語を用いているインドのケララ州に存在する『聖トマス・キリスト教会』は、生前のイエスの説教の余香を伝えるものと言えそうだ。

『聖霊のバプテスマ』とは一体何か
ヨハネ福音書の弁証法に従うなら、
【テーゼ】 『人は、人の子の証しを受け入れ、聖霊のバプテスマを受けることにより永遠の命を得られる(ヨハネ5:24)』。
【アンチ・テーゼ】 しかし、『地上の人間は、決して天から来たものの証しを理解できない(ヨハネ3:32)』。
それでは、地上の人間はどうして永遠の命を得られるのか。
【ジン・テーゼ】 『地上の人間は始めに神と共にあった言葉(ヨハネ1:1)に立ち返り、神が全き真理であることを自ら覚知すればよい(ヨハネ3:33)』。
文益禅師は「お前は慧超だ」と答えることにより、慧超自身の内に秘められた『真の自己(声前の一句)』を突きき付けたのである。(キリスト教の起源p.155)
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【参照】
《無門関》四十五則:他是阿誰
本則:東山演師祖(しそ)曰く、「釈迦弥勒(みろく)は猶(なお)お是れ他の奴。且く道え、他は是れ阿誰(あすい)。」
評唱:若也(もし)他を見得(けんとく)して分暁(ふんぎょう)ならば、譬(たと)えば十字街頭に親爺(しんや)に撞見(どうけん)するが如くに相い似て、更に別人に問うて是(ぜ)と不是(ふぜ)と道(い)うことを須(もち)いず。
頌:他の弓挽(ひ)くこと莫れ、他の馬騎(の)ること莫れ。他の非弁ずること莫れ、他の事知ること莫れ。
《トマス福音書》第四節
イエスが言った、「日々にある高齢の老人は、生後七日目の小さな子供に命の場所について尋ねることを躊躇しないであろう。そうすれば彼は生きるであろう。なぜなら、多くの先のものは、後のものになるであろうから。そして彼は単独者になるであろうから。」
《ルカ福音書》第18章16-17節
するとイエスは幼な子らを呼び寄せて言われた、「幼な子らをわたしのところに来るままにしておきなさい、止めてはならない。神の国はこのような者の国である。よく聞いておくがよい。だれでも幼な子のように神の国を受けいれる者でなければ、そこにはいることは決してできない」。

ヤムニア会議
ヤムニア会議(Council of Jamnia)は、おそらくエルサレム西部の町ヤブネ(Yavneh)において西暦1世紀末期に開かれ、そこでヘブライ語(旧約)聖書正典の最終的選考作業がなされたとされる仮説上の評議会。ハインリヒ・グレーツにより1871年に最初に提起されたこの説は、20世紀になって広く受け入れられた。しかし1960年代以降、疑問視されるようになり、今日その信憑性はかなり低下している。(英語版Wikipedia)
聖トマス・キリスト教会
聖トマス・キリスト教会は、西暦1世紀の使徒トマスの布教活動に起源を発するインドのケララ州に存在する古典的教会組織。彼らはまた『ナザレのイエス』の信奉者『ナザラニス』として知られる。ケララ州聖トマス教会は現在も『ナザラニ』と言う表現を用いている。
彼らはまたシリア式礼拝儀礼を用いていることから『シリアン・クリスチャン』と称される。礼拝儀式用語はアラム原語に由来し、その後シリア語に転化した。彼らはまた、マラバルもしくはマランカラと呼ばれるケララ州を拠点にし、マラヤーラム語を用いていることから、マラバル/マランカラ・マー・トマス・ナザラニスとも呼ばれる。(wikipedia)

<1>マー・トマス・シロ・マラバル・カトリック教会(Kodungaloor, Kerala)
聖トマスによりインドに設けられた7つの教会の1つと信じられる。









<2>セント・トマス・シロ・マラバル・カトリック教会(Palayur, Kerala)
聖トマスによりインドに設けられた7つの教会の1つと信じられる。








<3>セント・トマス・シロ・マラバル・カトリック教会(Kottakayal, North Paravur, Kerala)
聖トマスによりインドに設けられた7つの教会の1つと信じられる。










<4>セント・メアリー正教会(Niranam, Kerala)
聖トマスによりインドに設けられた7つの教会の1つと信じられる。








<5>セント・トマス・シロ・マラバル・カトリック教会(Kokkamangalam, Kerala)
聖トマスによりインドに設けられた7つの教会の1つと信じられる。









<6>セント・メアリー正教会(Thiruvithamcode Arappally = Royal Church)
西暦63年に聖トマスにより創設されたとされる。『Arapalli』は『Arachan Palli』の短縮形で王立教会の意。









<7>セント・メアリー・シロ・マラバル・カトリック教会(Kudamaloor)
西暦1125年にチェンパカセリ王により創設された。









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