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書評:聖霊のバプテスマ(軽蔑の教え)

ホロコーストで生き残ったものの、アウシュヴィッツで妻と娘を失ったフランス系ユダヤ人歴史家のジュール・アイザック(1877–1963)は、第二次世界大戦後、教会の歴史を紐解き、反ユダヤ主義のルーツを探した。アイザックは、初期の教会文献には、イエスの死の咎をユダヤ人全体に負わせるとともに、ユダヤ教を神と人間の関係の失敗例と見なす傾向が存在すると述べている。彼はこれを『軽蔑の教え』と呼んだ。
エルサレム教会は正統なユダヤ教組織として誕生

イエスの処刑からほぼ1ヶ月半後のペンテコステ(五旬節)の日に、ユダ族とレビ族双方の血を引くナジル派の司祭として、大祭司のみに許された聖所における祭儀を執り行い、日常生活の全ての戒律を完璧に実践する義人の誉れ高い小ヤコブに率いられ、大祭司カイアファの屋敷に隣接したエッセネ派の集会所において発足したエルサレム教会は、海外異邦人ユダヤ教徒およそ400万人とイスラエル国内のユダヤ教各派約80万人を統括するユダヤ教正統派の新組織としての役割を期待されていた。サンヘドリンにおいて「あなたがたは、何もわかっていない。ひとりの人が国民に代って死に、全国民が滅びないで済むことがわたしたちにとってどれほどよいことかを、考えてもいない」と述べ、「イエスは国民のために、また単に国民のためだけでなく、散在している神の子らを一つに集めるために、死ぬことになる」と預言した大祭司カイアファは、少なくともそのように考えていたに違いない。彼のこの証言を受けてエルサレムの宗教界はイエスを十字架に架ける準備に着手したとヨハネ福音書は記している(ヨハネ11:49-57)。
ステファノの殉教

カイアファの期待通り異邦人ユダヤ教徒が続々エルサレム教会に加わったことから、教会信者の圧倒的多数は、ギリシア語を共通語とするヘレニストで占められ、ヘブライ語とアラム語を話すヘブライストは少数派になった。この結果、ステファノ、フィリポ、プロコロ、ニカノル、ティモン、パルメナ、アンティオキア出身の改宗者ニコラオの7人のヘレニスト・リーダーが選ばれ、日常業務の管理を委ねられ、十二使徒は、祈りと御言葉の奉仕に専念することになった(使徒6:1-7)。
しかし、ステファノは、キレネとアレクサンドリアの出身者で、いわゆる『解放された奴隷の会堂』に属する人々やキリキア州とアジア州出身の人々などによりモーゼの律法と神を冒涜したと訴えられ、サンへドリンにおける宗教裁判にかけられた後、石打の刑に処せられた(使徒6:8-7:60)。これと時を同じくしてヘレニスト信者に対する大迫害が生じ、これらの信者はエルサレム城外に放逐された。ヘレニスト信者に対する迫害と城外放逐の指揮をとったのは、サウロこと、使徒パウロその人だった(使徒8:1-4)。
パウロの回心

ヘレニスト信者の放逐完了後、大祭司カイアファの信任状もってダマスコにわたったパウロは、ヘレニスト・グループと接触、一旦アラビアにわたりほとぼりを冷ました後、再びダマスコに戻るとシリアやキリキア州における伝道を開始した。パウロは、「イエスを救世主として認めさえすれば、終わりの日には永遠の命を得て復活できる」と説き、この福音に、モーゼの律法を含む一切の条件を付けることを拒否した。
旧約聖書の中の『神と人間の関係の失敗』と言うテーマに注目し、『この関係を修復するためにイエスが十字架に処せられた』と言うストーリーを最初に紹介したのは、パウロの書簡集だった。そしてその後、完成した全ての福音書の基調にもなったが、使徒行伝の記述から見て、こうした信仰は、その実、殉教者ステファノを初めとするヘレニスト信者の中で遙か以前から(恐らくイエスの誕生以前から)培われいたものと見られる。とは言え、パウロが居なければ、結実することはなかったろう。
ヘレニストとヘブライストの対立と初代教皇人事

パウロは、ガラテア信徒への手紙の中で、「アラビアからダマスコに戻った後、3年を経てエルサレムに赴き、ペテロの家に15日間滞在したが、この時エルサレムで会ったのは、ペテロ以外にはイエスの弟ヤコブのみだった(ガラ1:17-19)」とし、「自分が説く教えは、人から出たものではなく、エルサレムの長老や使徒から教わったものでもない。幻の中でイエスから直接啓示されたもので(ガラ1:11-12)、自分は生まれる以前に神により聖別され、時が来たらイエスに関する福音を異邦人に伝える器として初めから準備されていたのだ(ガラ1:15-16)」と主張している。つまり、パウロは、イエスの直弟子達が率いるエルサレム教会とは別の彼独自のキリスト教を樹立したのである。
このため、モーゼの律法や割礼を初めとするユダヤ人の慣習の扱いを巡り、エルサレム教会が派遣する宣教師との間に激烈な論争が生じたが、パウロはその書簡の中でこれらの宣教師を敵、あるいは偽教師と罵倒している。
第一次ユダヤ戦争が勃発すると、ローマ軍が侵攻する前に、エルサレム城外に退去した原始キリスト教会の信徒は、裏切り者として、ユダヤ社会からボイコットされたため、両者の蜜月時代は終た。このことも、その後編纂された福音書がイエスの死の咎をユダヤ人に帰する傾向を助長したものと見られる。
また異邦人キリスト教会内における、ヘブライスト信者(割礼派)とヘレニスト信者(非割礼派)の対立はパウロの死やエルサレム教会の消滅後も持続、このため、ローマン・カトリック教会は、初代教皇に、パウロでも、小ヤコブでもない、ペテロを叙したものと見られる。
ラビ代表団、ノストラ・アエターテ応答文を提出

ユダヤ教のラビ代表団は、2017年8月31日、バチカンを訪れ、ローマ教皇庁が1965年に発表した『キリスト教以外の諸宗教に対する教会の態度についての宣言』、通称『ノストラ・アエターテ』に対する応答文をフランシス教皇に手渡した。
『イスラエルのチーフ・ラビ』と『欧州ラビ会議』及び『米国ラビ協会』が署名した『エルサレムとローマの間のノストラ・アエターテ50年の反芻(Between Jerusalem and Rome: Reflections on 50 Years of Nostra Aetate)』と題する9ページの応答文は、キリストがユダヤ人によって殺されたと言う定説を覆したノストラ・アエターテ宣言の発表50周年を記念して作成されたものだが、完成するまでに2年を要したと言う。
軽蔑の教えと第二バチカン公会議

英国の正統派ラビで、1991-2013年の間、大英帝国ヘブライ信徒連合(United Hebrew Congregations of the British Commonwealth)の首席ラビを務めたロンドン大学キングス・カレッジのジョナサン・ヘンリー・サックス法律・倫理・聖書学教授によると、『ノストラ・アエターテ』は、十数世紀に及ぶ疎外と反目の後、ユダヤ教徒とカトリック教徒が敵としてではなく大切な互いに尊敬し合う友人として向き合うことができるよう、二つの宗教の関係を一変させた。ノストラ・アエターテ宣言が発表されたそもそもの因縁は、ホロコーストで生き残ったものの、アウシュヴィッツで妻と娘を失ったフランス系ユダヤ人歴史家のジュール・アイザックと第二次大戦中にユダヤ人の救済に努めた教皇ヨハネ23世の出会いにあった。
アイザックは、第二次世界大戦後、教会の歴史を紐解き、反ユダヤ主義のルーツを探した。アイザックは、初期の教会文献には、イエスの死の咎をユダヤ人全体に負わせるとともに、ユダヤ教を神と人間の関係の失敗例と見なす傾向が存在すると述べている。彼はこれを『軽蔑の教え』と呼んだ。
同書を読んだ教皇ヨハネ23世は、1960年6月、アイザックと面会し、異教、特にユダヤ教に対する教会の態度に再検討を加えることを決意した。教皇ヨハネ23世は、1962年に第二バチカン公会議(1962-65)を招集し、カトリック教会が教会としてユダヤ人との関係をいかに見るべきかを再検討に付し、全信徒の意識改革に乗り出した。こうして『ノストラ・アエターテ』起草のプロセスが開始されたが、教皇ヨハネ23世は1963年に亡くなり、生前にその完成を見ることはなかった。
キリスト教とユダヤ教の対話の歩み

大阪大司教区カトリック関目教会主任司祭を務める和田幹男氏の『キリスト教とユダヤ教の対話の歩み:第2ヴァティカン公会議から20世紀の終幕まで』によると、『ノストラ・アエターテ』宣言は、第2バチカン公会議を招集した教皇ヨハネ23世、同会議を締めくくった教皇パウロ6世、第4項ユダヤ教条項の作成に尽力したアウグスティン・ベア枢機卿の努力に負うところが大きいと言う。
カトリック教会とユダヤ教との対話の努力は第2バチカン公会議後も継続され、特にナチス支配の脅威を身をもって体験したポーランド出身のヨハネ・パウロ2世の登場により一層促進された。1998年3月16日、教皇庁の『ユダヤ教徒との宗教的関係のための委員会』は、 教皇ヨハネ・パウロ2世の承認のもと、『わたしたちは記憶にとどめます-ショア-を反省して(We Remenber : A Reflection on the SHOAH)』と題する文書を発表した。これをショア文書という。また、教皇ヨハネ・パウロ2世は、大聖年2000年四旬節の第1主日(3月12日)に、教会として犯した過去の罪を認め、 ゆるしを願うミサを行った。その中の共同祈願でユダヤ教に対して犯した罪を告白した。
サックス教授の提言

ジョナサン・ヘンリー・サックス教授は、「宗教的暴力が、中東、サハラ以南のアフリカ、アジアの広範な地域に混乱と破壊をもたらしている今、『ノストラ・アエターテ』の意味が一層重要性を増している。キリスト教徒も、イスラム教徒も、ユダヤ教徒も、煩悶している。我々が今必要としているのは、相互に敬意と責任を持つ契約の中で、すべての偉大な信仰を結集させた新しく広範なノストラ・アエターテだ。全ての宗教の指導者は、今日信仰の名の下になされている多くのことが、その実、信仰を冒涜し、最も神聖な原則に違反している事実を公に表明することを求められている。
仮にノストラ・アエターテをもたらすには、ホロコーストが必要だったとしても、我々を正気づかせるために人間と神の関係を損なわせる別の犯罪を待つようなことはよそうではないか。なぜなら我々はそれぞれ異なるが、一人一人が神の形象にほかならないからだ(創世1:26)。我々は、全ての人間を尊重することにより、神を敬うのである」と訴えている。<以下次号>

【参照】
Jewish Leaders Meet Pope Francis, Commemorate Decree Repudiating Idea That Jews Killed Jesus
"For though we are different, we are each in God’s image. We honour Him by honouring all humankind." Rabbi Lord Sacks
The Shoah document
キリスト教とユダヤ教の対話の歩み
わたしたちは記憶にとどめます ショアーを反省して
教会对非基督宗教态度宣言
Searching for the ancient paths since 1944

『聖霊のバプテスマ』とは一体何か
ヨハネ福音書の弁証法に従うなら、
【テーゼ】 『人は、人の子の証しを受け入れ、聖霊のバプテスマを受けることにより永遠の命を得られる(ヨハネ5:24)』。
【アンチ・テーゼ】 しかし、『地上の人間は、決して天から来たものの証しを理解できない(ヨハネ3:32)』。
それでは、地上の人間はどうして永遠の命を得られるのか。
【ジン・テーゼ】 『地上の人間は始めに神と共にあった言葉(ヨハネ1:1)に立ち返り、神が全き真理であることを自ら覚知すればよい(ヨハネ3:33)』。
文益禅師は「お前は慧超だ」と答えることにより、慧超自身の内に秘められた『真の自己(声前の一句)』を突きき付けたのである。
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